第8話
朝の選択肢
医者の言葉を思い出す。『生活習慣を意識することが大切です』。抽象的だと感じたあの言葉が、今はしっくり来ていた。
朝を変えることは、生活習慣を変えることではなく、自分の選択肢を増やすことだったのだ。
平日の朝。目覚まし時計が鳴る。起きるか、二度寝するか。その選択肢は、いつもそこにある。完璧に毎日起きられるようになったわけではない。金曜日に成功しても、月曜日に失敗することもある。だが、失敗したからといって、また選択肢が消えるわけではない。明日も、その選択肢は残っている。
今朝も、いつものようにコーヒーを淹れた。窓から見える街並みは、平日の急ぎ足だ。だが、その中で自分は、少しだけ異なる時間を過ごしている。提案資料を見直す時間。その日一日の予定を整理する時間。あるいは、ただぼんやり朝日を浴びる時間。
全部が上手くいくわけではない。朝の工夫が、すべての仕事を上手くさせるわけでもない。だが、朝の30分は、確かに何かを変えた。それは、仕事の質かもしれないし、気持ちの持ちようかもしれない。あるいは、単なる偶然かもしれない。
それでも構わないと思えるようになった。
ベッドから出る。朝の街を見る。コーヒーを飲む。その小さな選択肢を、また今日も選んでみる。完璧でなくていい。続かない日があってもいい。大事なのは、選択肢がそこに在るということ。そして、その選択肢を選ぶかどうかは、自分で決められるということだ。
カップを置いて、デスクに向かう。平日5時の選択肢は、今日も残っている。
(完)
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