第1話
第一話 朝の味噌汁
朝、目覚まし時計の音より早く起きたことはない。でも最近、味噌汁の匂いで目が覚めることが増えた。
自炊を始めたのは、正直なところ生活費の問題だった。外食続きでお金が消えるのが怖くなって、思い切って始めた。最初は「毎日頑張ろう」みたいな意気込みでいたけど、それだと続かないんだなあ、ってわかった。
今朝も、出汁を前夜のうちに仕込んでおいた。朝に熱湯を注ぐだけ。ネギを切るのも5分で終わる。むしろ、その短さが好きになった。完璧な料理じゃなくていい。毎日「また明日も」と思えることが大事なんだと気づいた。
湯気の中から立ち上る香りに、体が応答する。疲れていても、なぜか手が動く。これって依存ではなくて、習慣になってるんだろうな。習慣は、ちょっと強い味方だ。
朝食を終えて、空になった椀を眺めている。明日もこれを繰り返すのか。そう思うと、嫌な感じはしない。むしろ、自分の体と心に優しい時間が続いてくのが、心地いい。
そういえば最近、新しい野菜にも手を出してみたくなった。